【vol.2489】
こんにちは!
カウンセリングオフィス
プログレスのむかいゆかです。
かれこれ2週間も前になってしまいますが、
「見捨てられ不安」に関する記事で
今、何かと話題の
『Tシャツが乾くまで』というドラマに出てくる
松山ケンイチさん演じる主人公の夫、
充のことについてお話しさせていただきました。
その記事の中では
あえて触れなかったことがあったのですが
今日は、その続きについて
お話ししていきたいと思います。
充は、幼い頃に、唯一心を開けた
母親のお気に入りの喫茶店の店主と
引っ越しで別れることになった際、
それを告げても
あっさりとしていた店主に対して
「寂しがってくれないんだ。薄情だな」
と落胆します。
(詳細については
過去記事をご参照ください)
でも、そんな落胆は
すぐにこんな言葉に置き換えられました。
「気が楽にもなった
どこかにとどまってなくても
いいんだって」
これって、
一見、前向きな言葉ですよね。
悲しみを乗り越えて、
次に進んだようにも見えなくもない。

でも、私はこの場面を見ていて、
少し違う感覚を抱いていました。
というのも、
充のその言葉は悲しみや寂しさを
「乗り越えた」のではなく、
「感じる前に、
そう思い込む(考える)ことで
済ませてしまった」
と思ったから。
✔️ 悲しいことがあったはずなのに
気づけば「学びになった」と結論づけている
✔️ 傷ついた出来事を話すとき
感情よりも先に、状況の分析や説明が始まる
✔️ 「なぜそうなったのか」は
誰よりも的確に説明できるのに
「どう感じたか」を聞かれると
途端に言葉に詰まってしまう
もし、
これらのどれかに心当たりがあるなら
それは
あなたの冷静さや強さであると同時に
別な力が働いているサインかもしれません。
臨床の言葉では、
これを 「知性化」と呼んでいます。

知性化とは、
本来なら悲しんだり
傷ついたりする場面で、
その感情そのものに触れる前に
意味づけや説明で処理してしまう
一種の自己防衛手段のこと。
優秀な人ほど、
この防衛が上手かったりします。
状況を的確に分析できる。
「これにはこういう意味があった」と
筋の通った説明ができる。
だから周りからは
「大人だよね」「冷静だね」と
むしろ評価されることさえあります。
でも、防衛は防衛なんですよね。
感じるべき悲しみや怒りは、
処理されることがないまま、
心の中のどこかに押し込まれたまま
放置されてしまうのです。

理由は単純です。
圧倒されそうな感情を
そのまま感じようとすることは
自分がコントロールできない状態に
一瞬でも身を置くということだから、
怖くなってしまうんですよね。

特に、
✔️ 頼れる相手がいないまま育った
✔️ 感情を出しても
誰も受け止めてくれなかった
✔️ 弱さを見せることが
許されない環境にいた
そんな経験がある人ほど
感情を感じるより先に、
考えて処理する方を選ぶようになります。
それは、当時のあなたが
自分自身を守るために身につけた
れっきとした生存戦略。
意志が弱いからでも、
感受性が乏しいからでもないのです。
キャリアを積み、 実績も、
信頼も積み上げてきた。
自分の状況を、
誰よりも的確に説明できる。
なのに、なぜか ふとした瞬間に
説明のつかない疲労感や
虚しさに襲われることがある——。
そんなご相談を
これまで多くの方から伺ってきました。
大抵の場合、
「わかっていない」のではありません。
むしろ「わかりすぎている」からこそ
感じるはずだった感情に蓋をしたまま、
ここまで来てしまったんですよね。
頭で理解することは、
残念ながら、
感じることの代わりにはなりません。
どちらも、あなたに必要な
大切なものではありますが、
もし
✔️ 出来事を説明することはできても、
その時の気持ちを聞かれると詰まる
✔️「もう心の整理はついている」はずなのに
なぜか同じことを繰り返し考えてしまう
✔️ 冷静でいることに
どこか疲れを感じている
そんな感覚に心当たりがあるなら、
一度、説明の言葉をいったん脇に置いて
その奥にある感情に、一緒に触れてみませんか。

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公認心理師 | 臨床心理士 | AEDP®︎認定セラピスト
向 裕加(むかい ゆか)
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