
【vol.2178】
こんにちは!
カウンセリングオフィス
プログレスのむかいゆかです。
世界的にも権威のある推理小説の賞
『ダガー賞』の翻訳部門で
日本人として初めて受賞したというニュースで
私は初めて王谷晶氏のことを知りました。
興味が湧いてきて
いろいろと検索しているうちに
授賞式での彼女のスピーチの内容や
「自分の曖昧さを受け入れ他人の曖昧さを認めることが世の中をよりよくすると信じています。」
王谷晶『ババヤガの夜』ダガー賞受賞。
このスピーチは授賞式後皆から「素晴らしかった」と声をかけられたそう。
まさに作品に通底している思想。ぜひ作品もご一読ください。https://t.co/rNojTo4XW9 pic.twitter.com/UuyzjXKhyM— 河出書房新社 (@Kawade_shobo) July 4, 2025
インタビュー動画が出てきたりして
その中で語られる
「曖昧さこそが大切である」
というメッセージに
思わず深く頷いてしまいました。
曖昧さを排除しないこと。
はっきりしないままに、
しばらく共にいること。
それこそが
セラピーでも、今の社会でも
必要な視点だと強く感じたから。
選挙が近づいた今、
街にはいろんな「声」が
響き渡っています。
「これが正解です」
「これが真実です」と
かなり断定的に言い切る
演説やSNSでの投稿が
目につくようになりました。
混乱や不安が続く時代だからこそ
ハッキリ言い切ってくれる人に
頼もしさを感じる—
それは決して不思議なことではありません。
「自分の気持ちを代弁してくれる」と感じて
その言葉にすがりたくなるのも
自然な反応です。
けれども、その「強さ」は
ときに私たちの感じる力や考える力を
奪ってしまうこともあります。
白か黒か、善か悪か。
そんなふうに
単純に切り分けられた世界の中では
“私”の存在は簡単にかき消されてしまう—
その危うさを
見過ごしてはならない気がしています。
セラピーの場面でも
「先生、どうすればいいですか?」
と明確な答えを求められることがあります。
もちろん、それだけ困っていたり
苦しさの渦中にいるということだと思います。
けれど、私が大切にしているのは
その場で安易に答えを出すことではなく
「わからないまま」で一緒にいながら
少しずつクライエント自身の中から
見えてくるものを育んでいくという
プロセスです。
答えを“与える”のではなく
問いながら“一緒にみつけていく”こと。
その曖昧さに留まる時間こそ
クライエントの主体性を守るために
必要なものだと感じています。
ハッキリした言葉は
一時的な安心をくれるかもしれません。
でも、自分の感覚や経験を丁寧にたどって
自分で選び取っていくというプロセスには
もっと深くて静かな力があると信じています。
曖昧さを怖れずに
「まだわからない」という状態を
自分にも他人にもそして、社会にも
許すことができたなら—
誰かに決めてもらうのではなく
誰かに押しつけるのでもなく
対話をしながら“自分の言葉”で
歩いていけるようになる。
そんなふうに世界が動いていけたら
きっと、もっと生きやすくなると思うのです。
王谷さんの言葉に
そんな希望を見出しました。
王ダガー賞受賞作品『ババヤガの夜』も
早速ダウンロードしたところ。
時間を見つけて、ゆっくりと味わいながら
読んでいきたいと思います。
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